十一月
―かつてのDDR
(東独民主主義共和国)
にて

全能のサイクロプスの眼が雲に入り
草が炭塵の中で身ぶるいした。

前夜の夢に打ちひしがれたまま
わたしたちが列車に乗りこむと
それが 各駅に停って
卵を産む。

殆ど 物音はない。
響きわたる教会の鐘はバケツのかたち
ちょうど水を汲んで来たような。
そして誰かの容赦もない咳が
そこらすべてに吠えかかる

石の偶像ひとつ 唇を動かす――
それがこの町。
ここでは鉄のように固い誤解がまかり通る
キオスクの店員 肉処理人
ブリキ職人 海軍士官たちの間を
誤解は鉄の固さなのだ、学究達よ。

わたしの眼の何と疼くこと!
土ぼたるランプの弱い光で読んでいたからだ。

十一月が固い石のキャラメルをもてなす。
思いもよらぬことだ!
ちょうど 世界の歴史が
見当違いなところで笑うように。

いずれにせよ わたしたちはあの響きを聴く
教会の鐘のバケツが水を汲んで来る
水曜日毎に
――水曜日ですって?
そう、日曜とするのはわたしたちの思い込みなのさ!


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